黄瀬くんの野望・・・?
黄瀬涼太は朝から笑みが止まらなかった。
モデルもやっているキセキの世代の一人で有名人である彼の顔が緩んでいる。
それは学校についてもおさまらない。
行きかう人は黄色い声を上げるか、ヒソヒソと声をささやく。
そんなことも気づかず、いや挨拶してくれる女子には笑顔で手を振るのだから気づいているはずだ。
部活の朝練があるので部室へ向かう。
向かう途中も顔が緩みっぱなし。
ここまでくると少し気持ち悪いが・・・そこは黄瀬涼太である。
持ち前のスタイルと整った顔がそれを未然に感じさせない。
朝練中も黄瀬涼太は笑みをこぼしている。
そのこぼし方は尋常ではない。笑みを通り越してニヤニヤしているといったほうがいい。
チームメイトは明らかに引いている。
途中から笠松に何とかしてくれ。との懇願が飛ぶ。
笠松は溜息をはくと、黄瀬の頭を殴った。
「何するんスか〜センパイ」
頭をさすりながら、黄瀬は笠松の方に振り向く。
「何じゃない。何をニヤニヤしてるんだ!?」
黄瀬は笑みをこぼしながら、
「だって、今日はセンパイと一緒に過ごせるんっスよ〜嬉しいじゃないっスか」
そういわれて、笠松は明らかに動揺した。
「なっ!面と向かって言ってんじゃねー、恥ずかしいだろ」
笠松はプイッと顔を背けた。
「と、とにかくそのニヤけ面をやめろよ」
笠松はそういうと練習に戻った。
それでも黄瀬の顔はニヤけたままだった。
部活後、笠松と一緒に彼の家に向かう。
今日は黄瀬の誕生日ということもあって、一緒に過ごす約束していた。
途中でケーキと黄瀬の好きなオニオングラタンスープなどを買う。
「ねぇ、センパイ。俺すごくうれしいっスよ」
満面の笑みを笠松に浮かべて、黄瀬はそう言った。
その笑顔に笠松はドキッと心を躍らせた。
「俺もだ、黄瀬」
今すぐ抱きしめたい衝動にかけられながら、笠松は家路に向かう。
抱きしめるのは家に着いてから、思いっきり抱きしめよう。そう思った。
家に着いて、2人はすぐに笠松の部屋に向かう。
着替えてから、買ってきたケーキと食べ物を床に広げる。
2人で簡単に誕生日を祝う。
祝いながら、たわいもない話やバスケの話で盛り上る。
「黄瀬、これプレゼントだ」
笠松は黄瀬にプレゼントを渡す。
黄瀬はそれを受け取りながらありがとうっス。とお礼を言った。
「・・・笠松センパイ、俺もうひとつ欲しいものがあるんスよ」
顔を赤く染めながら、黄瀬はつぶやいた。
その表情が笠松には艶っぽく感じた。
ドキっと心が鳴る。
抱きしめたい衝動が体中をめぐる。
何でも願いを叶えてあげたくなる気持ちをこらえながら、
「欲しいもの?」
そう答えた。
黄瀬はスッと体を笠松の方に寄せる。
「・・・センパイ・・・」
黄瀬の顔が近づいてくる。
ドキドキと鼓動がなる。
顔が重なる瞬間、唇が触れ合った。
黄瀬からの初めてのキスだった。
普段、キスは笠松からだったが、されるのがこんなに気持ちがいいと思わなかった。
黄瀬の柔らかい感触が心地いい。
触れるキスから絡み合うキスに変わり、笠松は無意識に黄瀬を抱きしめていた。
「センパイ・・・好きっスよ・・・」
本来なら、ここで終わるはずだった。
笠松と黄瀬は恋人同士ではあったが、キスどまりのままだった。
黄瀬のほうはマジでエッチまでしたいと思っていたのだが、
当の本人はなかなかそこまでいくことができないらしい。
女子との会話も恋愛ものにも疎い彼だから仕方のないことだが・・・
待っていたらおじいさんになってしまう。
黄瀬は密かに誕生日を狙ってエッチまでしてやろうと心に決めていたのだ。
黄瀬は笠松の中心に手を添えると、笠松がビクッと震えた。
「センパイ、俺・・・欲しいっスよ・・・」
うるうるとした視線を笠松に向け、静かにつぶやいた。
笠松の体がさらに震えた。
「黄瀬・・・」
笠松は黄瀬を抱きしめるとそのまま、黄瀬を押し倒した。
笠松も黄瀬を抱きたい思いは常にあったのだが、
彼を好き過ぎてどうにかなってしまう自分が怖かった。
理性が飛んでいく。
彼を一度でも抱けば、抱き続けたくなる。
彼を手放すことができなくなる。
そんな自分が怖かった。
「・・・黄瀬・・・好きだ・・・」
―お前を失いたくない―
愛しい人の体に消えない証を残しながら、笠松は黄瀬を優しく包み込んだ。
「センパイ・・・俺・・・すごく嬉しいっス・・・」
黄瀬は笠松を五感で感じながら、笑顔を浮かべた。
「黄瀬・・・」
笠松と黄瀬はお互いの熱と温もりを感じとった。
隣で眠る黄瀬の顔を見つめながら、笠松は彼の頬に唇を落とす。
抱き合って初めて、さらに愛しいと感じた。
彼を好きになってよかったと思う。
「黄瀬・・・誕生日おめでとう」
笠松は改めてそう、寝ている黄瀬に声をかけた。
「・・・センパイ・・・」
黄瀬は眠りの中のまま、笠松の名前を呼んだ。
「・・・今度は俺が・・・抱いてあげるっスよ・・・」
笠松の鉄拳が飛んできたのはすぐ後だった。
おわり